小説

ヘタなミステリーを読むより『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』を読んだほうがいい。

 

 

皆さんは「ディアトロフ峠事件」ってご存知ですか?

僕もこの本を読むまで全く知らなかったんですが、冷戦下のソヴィエトで起きたロシア史上最も謎に満ちた未解決事件だそうで。

 

ヘタなミステリーよりも面白かったので紹介します。

 

 

ディアトロフ峠事件とは

1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが当時のソ連でトレッカーの最高資格となる第三級を獲得するために、登山へと向かうことから事件は始まります。

出発から10日後の2月1日、一行が道中ホラチャフリ山キャンプを設営し、その場所で50年以上経った今もネットを騒がす「ディアトロフ峠事件」起きたのだ。

メンバー全員がテントを飛び出し(テントが内側から破られていた)氷点下マイナス30度の真っ暗闇の中へ離散。捜索隊の調査報告によれば9名の遺体が発見されたのは、テントから1キロ半ほども離れた場所だった。彼らはろくに服も着ておらず、靴もはいていなかった。死亡した9名のうち3人は頭蓋骨を骨折しており、女性メンバーのひとりドゥビニナは舌がなくなっていた。さらに、メンバーが着用していた衣類からは異常な濃度の放射線が検出されたのだ。

事件の謎

事件が発生した様子を見る限りでも物凄く不気味なのが伝わってきますよね。

何故氷点下マイナス30度の真っ暗闇の中へメンバー全員が出てしまったのか、

靴も履いていない状態で、しかも内側からテントを破った形跡が….

言い出したらキリがないぐらい不可解な点がこの事件にはあり、そのせいか陰謀論やUFO、宇宙人、ビックフット、はたまたメンバー間の痴情の縺れの末に起きた殺人事件など、扇情的な見出しで語られる事が多かったみたいです。

そして今なお事件の真相は分かっておらず、未だ闇の中という….。

三つの視点が交錯する物語。

今回紹介する『死に山』では三つの時代、視点が交錯して物語が進んでいきます。

1.トレッカー達の手記、写真を元に当時の様子を綴った視点

2.救出隊、調査団が当時目の当たりにした光景、報告を基にした視点

3.時代を経て著者が実際にトレッカー達が歩いた地を訪れ、当時を知る人達に取材を試み、フィールドワークをした結果得た情報、感想を綴った視点

 

ここから最後の章に綴られる、著者が辿り着いた仮説を元に再現した事件発生時の一夜に向かって怒涛の勢いで物語は進んでいきます。

ネットなどでこの事件を調べるとその不気味さ、ショッキングさからか事件の内容にばかり触れられて被害者達の人物像を思い浮かべることが出来ず、事件の異様さにばかり目が行きがちなのですが、この『死に山』ではディアトロフ達が冷戦下に生きたごく普通の未来ある若者であったという事、「ディアトロフ峠事件」が何故ここまで尾ひれをつけて語られるようになったのか、当時の国の対応、隠蔽体質、国民の国への不信感など、その時代の空気感がありありと描かれていて、ショッキングな未解決事件の真相を暴くという側面だけでは語れない一冊になっています。

 

 

事件の真相は?

 

今回ネタバレはしないが、著者は今まで語られてきた様々な仮説(雪崩、軍事実験、ビックフットなど…)を科学的、論理的に虱潰しに検証、否定してゆき事件の真相へと向かっていきます。

著者が辿り着いた仮説は当時の科学力では想像することすらできなかったであろう「大気物理学」という学問から導き出した非常に説得力のあるものになっています。

 

読後の感想

この『死に山』テーマがテーマだけに情報量が多く重厚で読み進めるのにかなり時間を要すると思っていたんですが、著者の語り口が秀逸でその面白さに熱中してしまい、一晩で読みきりました(笑)

複雑怪奇な未解決事件という側面はもちろんのこと、ディアトロフ達が生きた時代の息遣いや彼らが何故登山をするに至ったのか、などただの謎解きで終わらせない部分に著者のこの事件に向き合う姿勢や、敬意を感じて非常に好感の持てる一冊でした。

著者が導き出した仮説も論理的で非常に説得力があるものなんですが、オカルト好きとしてはビッグフットやエイリアンの仕業であって欲しいなあと思ってしまうのでした…。

 

『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』

 

文句なしに面白く、オススメできる一冊です!是非読んでみてください。